NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会 横浜ロシア語センター

冬の読書会
ノーベル文学賞受賞者 イワン・ブーニンの≪Последнее свидание≫を読む

講師:竪山 洋子(横浜ロシア語センター講師)

アンドレイ・ストレーシュネフには15年来の恋人、ベーラがいる。
なぜ、結婚することもなく、15年が経ったのか、最後の逢瀬で二人は何を語りあうのか?
貴族の恋は、なぜ、庶民のようにはいかないのでしょう?


日時2018年12月23日(日)13:00~15:00、12月24日(月・祝)13:00~15:00(全2回)
講座の内容作品を通じてより多くの語彙・慣用句を獲得し、構文と親しみ、ロシア人気質に触れてみましょう。
授業ではシンクロリーディングを活用して、朗読をします。
また、あらかじめ全編を読んできてもらい精読していきます。
読んだことを短くロシア語で伝えることにもチャレンジします。
初日に精読用の単語帳も用意しますので、肩ひじ張らずに来てください。
予習について初日は音読を中心にします。全編を声をだして「読める」ようにしてきてください。
最初は、シンクロリーディング用動画の音声を最後まで聞いてください。
その際、本文サイトを目で追いながら聞いてください。
その後、少しずつ止めながら、本文サイトと照らし合わせて、声を出して読んでみてください。

●シンクロリーディング練習用動画 (YouTube) Последнее свидание

●本文予習用サイト (LIBKING) Иван Бунин - Последнее свидание
受講対象者ロシア語能力検定3級以上のレベル。格変化は勿論、動詞の体、形動詞・副動詞の学習を終えている方。
会場横浜平和と労働会館 5階教室
受講料会員8,800円、一般10,080円(全2回分)
最少開講人数3名
お申し込み・受講料納入締切12月21日(金) ※受講料納入をもって正式なお申し込みとさせていただきます。

1. ご用件、お名前、電話番号、Eメールアドレス、受講希望の旨を横浜ロシア語センター事務局にご連絡ください。

こちらのメールフォームに必要事項を入力・送信してください。
ご用件欄で「受講お申し込み」を、希望クラス欄で「12/23,24冬の読書会」を選択してください。

または Tel/Fax: 045-201-3714 へご連絡ください。
※電話・来所の場合、平日・土曜12時~18時

2. 開講決定後、ご案内に従って、12月21日(金)までに受講料をご納入ください。
料金のページ記載の指定口座のいずれかへ、または教室事務所にて直接お願いします。

 12月23日、24日の2日間にわたり、ロシア文学を原文で楽しむ読書会を開催しました。

 対象者をロシア語検定3級以上の方とし、予習用にオーディオ・ブックのURLと、本文サイトを提示し、予め声を出して、また、辞書を引くなどして読了してきていただきました。

 1日目は、ブーニンのロシア語で書かれた来歴を読み、和訳して、物語の背景を確認し、本文から抜粋した文章で、物語の全体像を把握するために、登場人物の人物像とあらすじを確認しました。

 その後、練習してきていただいた音読をしました。これには、通訳の訓練法であるシンクロリーディングを用い、ラジオ劇場の音声を聞きながら、本文を声に出して読んでいきました。皆さん、とても上手にできていました。

 そして、1章と2章前半をあらすじや人物像把握のために読んだ箇所をのぞき、抜粋箇所のみ、ロシア語で読み、日本語に口頭翻訳していきました。かなりハードだったと思いますが、皆さん、とても素敵な訳にしてくださいました。シンクロリーディングで集中力を使い果たしたとは思えない、素晴らしいパフォーマンスをしてくださいました。

 2日目は、2章後半から3,4章をやはり抜粋箇所を精読していきました。文法的に解析しないと読めない箇所、行間を読み取るのに重要な箇所などは立ち止まってディスカッションしながら進みました。3章は恋人たちのやりとりが詳細に描かれていますが、多くを読み取れる章ですので、丁寧に読んでいきました。

 最後の15分はディスカッションにあてました。読後感を語りあい、その後、ロシア人読者の感想も読んで、物語の意図を考察しました。

 終了後、書評や感想をそれぞれロシア語か日本語で書いていただきました。


◆ W・Kさんの書評

Писатель изобразил пейзаж, животных, героев и их одежду очень ярко и подробно. Поэтому читатель чувствует как будто он смотрит картины или фильм, и понимает сцены.

Читатель может узнать чувства героев из подобного изложения их действия и поведения. В этом произведении используются метафоры эффективно. Они помогают читателю понять содержание конкретно. Особенно, часть конца, о щеглах ? это выражение будущего Стрешнева: изменение его жизненной пути.

(原文ママ)


◆ K・Gさんの感想

イワン・ブーニンという作家を今回はじめて知りました。講師や他の参加者の助けを借りながら原文を読み進めることで訳文では把握しがたいロシア語ならではの雰囲気を感じ取ることができました。特に、作中の風景や恋人同士のやり取りの描写はとても繊細で趣のあるものでした。


◆ O・Aさんの感想

非常に充実した授業でした。先生のお話を聞いて読み飛ばしていたところに深い意味があることに気づかされました。特に、最後の一節、一文に深い意味。作品全体が見直されました。さすがにブーニンの作品・短編は素晴らしいと思いました。


 他にも、「音声を事前によく聞いてきたけれど、とても美しい言葉だと思いました。」「とても興味深かったです。講座のための準備は非常に自分のためになりました。難しかったのですが、得難い時間を過ごしました」などのご感想を聞かせていただきました。

 そして、「次回は、チェーホフのかもめや短編が読みたい。トルストイの民話など。」「チェーホフが読みたい(ロシアの有名作家ならなんでも読んでみたい)。」「なんでもいいからまたお願いします。」というように、アンケートに書いてくださいました。

(竪山 洋子)


「最後の逢瀬」

 1912年8月12日 イタリア・カプリ島にて執筆

登場人物

 ストレーシュネフ・アンドレイ 鉤鼻、後ろにそらした小さな頭。やせ型、肩幅が広く、背が高い。風雪にさらされた顔。ごわつき縮れた白髪交じりの顎ひげを蓄え、筋張った首。また、長いブーツは古びており、上着の裾には、野うさぎの血が固まって黒いシミになってこびりついていた。

 ベーラ 薄い明るい色の上着をはおった小さな女性。胸に十字架、黄金の、祖母の形見だった。最後の財産だ。…小さな足は、軽くて、ヒールの高い、パンプスを履いていた。彼女自身がとてもお気に入りのものだった。

あらすじ

第1章:ストレーシュネフは使用人に命じて、馬に鞍をつけさせた。両親がどこに行くのか尋ねるが、「子供じゃないんだから」と答える。両親は「申し合わせた逢引きに駆け付ける若者よ!」と冷やかしているのか、心配しているのか。

第2章:白い息を吐いて、馬は、霜でガラス細工のようになった低木の中をやっと通り抜けていった。山の斜面には、刈り取り後の畑の中に粗末な田舎屋敷がたっていた。

第3章:夜明け前、寝台近くの床にろうそくが灯っていた。ストレーシュネフは、シャツをはだけて、頭の後ろに手をまわし、仰向けに長々と寝ていた。ベーラは、ひざにひじをついて、悲痛をかかえ、彼のそばに座っていた。

第4章:中庭で空近い太陽がぎらついていた。昇降口が雪で真っ白になっていた。4輪馬車がやってきた。ベーラは、高そうで軽いが、使い古して、流行おくれの毛皮のコートを着て、昇降口に出てきた。

神奈川県日本ユーラシア協会機関紙
「日本とユーラシア」2019年1月号
より